2025-10-29

「ひとり親でも不完全ではない」1人で2人の子どもを育てるレズビアンシングルマザーが選んだ道

プロフィール

かんさん(40歳、レズビアン、公務員、佐賀県出身)

住まい 佐賀県 3人かぞく(子ども2人)・マンション暮らし

利用制度 パートナーシップ制度 未利用

プロフィール項目==検討中==

2人の子どもを育てるレズビアンシングルマザーのかんさん。配偶者がいない「ひとり親」に対して、「欠けている」「かわいそう」といったネガティブな印象を抱く人もいるかもしれません。しかし、かんさんは「パートナーがいない生活は自分に合っている」と語ります。子どもたちの面倒を見ながら、取材に対応してくれたかんさん。1人で力強く生きる彼女の半生を覗いてみましょう。

目次

子ども2人と暮らすシングルマザー

ーまず、かんさんについて教えてください。

佐賀県在住。5歳と8歳の子どもをもつシングルマザーです。公務員として働きながら、NPO法人「にじいろかぞく(子育てするLGBTとその周辺をゆるやかにつなぐ居場所を提供する団体)」のスタッフとして、近県のイベントに参加したり、オフ会を企画したりしています。

ー仕事と子育てを両立することは大変だと思います。普段はどのようなスケジュールで動いているのでしょうか。

朝は5時半くらいに起きます。家事を一気にやって、7時40分くらいに子どもたちを小学校と保育園に送り、8時半に仕事が始まります。17時半〜18時くらいまで働き、子どもたちを迎えに行って19時に帰宅。そこからお風呂に入れたり夜ご飯を食べさせたりして、22時半くらいに子どもたちと一緒に寝てしまいます。本当は子どもたちが寝た後に家事をして、自分の時間もほしいのですが、起きられません。そんな日々の繰り返しです。

ー休日はどのように過ごしていますか?

わたしは出かけるのが好きなので、博物館や映画館、地域のイベントなど、いろんなところに行きます。子どもたちに何か経験させているという安心感がほしいのかもしれません。子どもたちからは「おうちでのんびりしたい」と言われることが増えてきました。

子どもにジェンダーを教える

ーお子さんはかんさんのセクシュアリティについて知っていますか?

上の子はよくわかっていると思います。わたしの好みの女性アスリートがテレビに出ていると、すぐに教えてくれます。下の子は小さいからかまだ理解していないようです。小さい頃からいろいろなかぞくのあり方を描いた絵本(例えば、『王子と騎士』)を読み聞かせたこともありますが、意外に子どもにスッと届いたと感じたのは、一般的な絵本を読んだり、映画を見たりするときに「なんで男女のペアばっかりなのかな。世の中にはいろんな人がいるのに。ママは女の人がいいのに〜。」とさらっと伝えるやり方です。そのほかには、にじいろかぞくのメンバーとの交流を通じて、自分のかぞく以外にもいろんな形のかぞくがいることを理解していきました。

ひとり親として子どもを育てること

ーひとり親としてお子さんを育てる道を選んだきっかけはありますか?

わたしは最初からひとり親だったわけではありません。家庭内にも周囲にも、なるべく嘘なく隠さず子育てしたいと思っていたので、自分と子どもにとってよりよい環境にするために「解散」して、わたしと子どもだけのかぞくになりました。自由に振る舞えるようになってスッキリしました。

子どもの有無に関わらず、パートナーがいないと「欠けている人」と思われることが多いし、ひとり親になってすぐはわたし自身も「欠けてしまった」と感じていました。しかし、実際にひとり親をやってみると、周囲に気を使わず、やりたいことをやりたいときにすぐできる環境が、わたしの性格には合っていると感じます。

ーひとり親が受けられる制度や支援はあるのでしょうか。

あります。まず金銭面が気になると思いますが、収入に応じて児童扶養手当など金銭的な支援制度があり、それに連動して医療費やファミリーサポートの助成があったので、利用していました。

あとは、人手ですね。現在は母親が近くに住んでいるので困ったときは駆けつけてもらっていますが、関東に住んでいた頃は地域のファミリーサポート制度やベビーシッター、家事代行も利用していました。そのほか、ママ友を頼ったり、友達のカップルさんたちを休日に呼び出して子どもと遊んでもらったりもしました。親の無理のしわ寄せは子どもに行くことを肌身で感じていたので、とにかくいろんな人に頼っていました。お金も使いました。

子どもたちには、いろいろな大人と関わることでいい影響があったと思います。わたしが苦手なお絵かき、ピアノ、手作りお菓子のおやつ、長時間の追いかけっこなど、とてもわたしだけでは経験させられませんでした。

行政の制度や支援に思うことは、就職先を探したり、資格を取ったりこれから生活を立ち上げるゼロから人生をスタートする人たちに向けてばかりでなく、わたしのように生活はある程度回せているけど、しんどいときもあるひとり親へのフォローがあったら嬉しいです。

ー親御さんからのサポートは大きいですね。

そうですね。関東に住んでいた頃、母親は定期的に1ヶ月単位で手伝いに来てくれていました。子どもにとっては、、話を聞いてくれたり意見を言ってくれたりする身近な大人が、親以外にできるのもいいことだったと思います。今は実家まで比較的近いところに住んでいるので、何かあったときは頼りにさせてもらっています。日々、子どもたちを近くで見てくれているので、子どもたちに関する相談もしやすいです。

ー関東から佐賀に戻られたとのことですが、Uターンしたきっかけはありますか?

関東では民間企業に勤めていて、通勤に1時間かかっていました。コロナ禍を経て在宅勤務が増えていたのでなんとか生活を回せていましたが、段々と出勤へと会社の方針が替わってきてしまって。在宅勤務を選択できるよう会社と交渉してもうまく行かず、苦しく感じていました。

上の子の小学校進学を目前に、学童では保育園のように長く預けられないし、子どもたちに相当の負担をかけることになるという危惧がありました。関東での生活は気に入っていたので、引っ越さずに転職できる企業を受けたり、公務員も調べましたが、送迎の時間や給与面、転職して有休が一旦減ることなどを考えると、手詰まりになってしまうなと。その頃、ちょうど地元が積極的にUターン採用をしている情報が入ってきて、ええい!と受けたら受かったという流れです。

40代に突入し、「自分ってどんな人間なんだろう?」と改めて考えることが増えました。20歳を前に焦った感覚と若干似ていて、もう逃げも隠れもできない大人になったという感じです。20年ぶりにその波がきたとはいえ、仕事も子育てもあるし、自分のできないことばかりに気を取られて立ち止まる時間もない。得意なことやできることを活かした「自分の取説」を改めて考えていきたいです。

かんさんからのメッセージ

世間的には、LGBTQ+というと同性カップルが連想されがちで、子育てをしているとなるとその傾向はもっと顕著に表れるでしょう。だけど、ひとり親のLGBTQ+もわたしの周りには何人もいます。わたしは子どもを授かってからひとり親になったパターンですが、1人で授かった人や、異性婚をしたあとにセクシュアリティを自認して1人で子育てする人もいます。かぞくの形やその成り立ちは、本当にさまざまです。

また、異性カップルが出産・育児を機にすれ違い始めるという話はちまたに溢れていますが、それはLGBTQ+のカップルでも同様に起こり得ます。もし、パートナーが一緒に子育てをするのに向いていないと感じたら、その原因が相手でも自分でも、2人の価値観の違いでも、2人での子育てにこだわる必要はないんじゃないかとわたしは思います。せっかく授かった子どもなので、2人親でいること自体に縛られるよりも、子どものベストを追求するのがよいのかなと。

ひとり親になるとき、1人で子どもを育てていく並々ならぬ覚悟が必要と思うかもしれませんが、わたしのおすすめは「積極的にいろんな人を頼る覚悟」です。実家のかぞくや、学校・保育園、友人、行政の支援や民間サービスなどいろんな頼り先があります。調整は大変ですが、親の無理のしわ寄せは1番最初に子どもにいきます。ここが頑張りどころです。

先輩ママに言われた「お金でなんとかなることは、お金で解決!出先でおもらしした子を叱る前に、即、かわいいズボンを買ってご機嫌になるのよ!」は金言でした。もちろん子どもにも助けてもらいます。「ママは疲れてもうダメです!」と宣言してみんなでダラダラする日もあるし、2人とも張り切って家のことをやってくれる日もあります。困ったときに「助けて」と弱音を吐ける親の背中はきっと子どもにもいい影響があると思います。1人で子育てするのも結構いいものです。かわいい子どもを独り占めできますしね。

text&interview:Honoka Yamasaki / photo:Rina Amagaya / retouching : Emi Yasuda / みらいふ編集部
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