2024-04-19

当事者が動けば社会は変わる【同性婚訴訟】

プロフィール

左/中谷衣里さん(32歳、L、NPO法人L-Port 職員、北海道旭川市出身)

右/チャッキーさん(30代、L、会社員、北海道上川郡出身)

2008年~(2024年現在、17年目)

北海道札幌市

パートナーシップ制度 あり(2018年、札幌市)
公正証書:なし 緊急連絡先カード:あり

WHY? ~なぜそれをしようと思ったのですか?~

中谷 裁判(「結婚の自由をすべての人に」訴訟)を始めたきっかけは、弁護士さんから声をかけられたんです。北海道訴訟の弁護団と原告団はもともと裁判の前からいろんな当事者活動を通じて接点がありました。実は、原告になる予定だったカップルが家族の事情でどうしても立つことができなくなっちゃって、あわてた弁護団から「2、3日で決めて!」みたいな感じで、この先5年10年続くといわれる訴訟の原告をやるかやらないか迫られた(笑)。私たちも、もちろん結婚できたらいいなと思ってましたけど、この訴訟を絶対やりたいんです!っていう強い思いが最初からあったかっていうとぜんぜんそうではなかったです。

チャッキー 私は、衣里がやるならやる、衣里に頼ればいいしって感じでした。ただ、私は会社でも一部の人にしかカミングアウトしてなかったり、親にも裁判のことは言ってなかったりするので、顔と名前は出していません。母から「ふたりで慎ましく暮らすのはいいんだけど、メディアに顔出しとかしないでくれ」みたいなことを言われていて。母はちっちゃな田舎町に住んでいるので……。

中谷 私はけっこうふたつ返事で「やります」っていう感じだったんですよね。何でかっていったら、その直前に札幌市パートナーシップ宣誓制度ができたんですが、当事者たちがめちゃくちゃがんばって自分たちのために制度を作ったっていうのを間近で見て知っていた。当事者や支援者が動けば地域が変わる、社会は変わりつつあるんだっていうことを実感していたので、この訴訟も長い時間がかかっても、続けていったらあるとき何かの形で実を結ぶんだろうなっていう確信がありました。

チャッキー 私はあんまり人前でしゃべるとか得意じゃないんですけど、声を上げたくても上げられない人はきっとたくさんいるので、がんばろうと思いました。

HOW? ~どのようにしましたか?~

中谷 実際、こんなに大ごとになるとは思ってなかったですね。自分たちの生活に訴訟が入ってくると何が起きるか、わかっていませんでした。年に1、2回は東京に行って、国会議員と会ったり、陳述や尋問のために文章を考えたり、練習をしたり……。

チャッキー 弁護士さんたちがめっちゃいろいろ動いてくれて、「大事なとこだけ原告さん来てください」って言ってくださるので、無理はしていません。そこまで時間を割いているという感じはしないですね。ただ、男女だったらこんなことしてなくていいのに、っていう思いはありますけど。

SO WHAT? ~やってみてどうでしたか?~

中谷 SNSなどで否定的な言葉を直接かけられるようなこともありますが、弁護団や他の当事者たちがみんながんばって守ってくれているのを感じます。

チャッキー 応援してくれる人が多いんだなって思いました。国会に行ってみて、自民党でも反対する人だけじゃないんだ、賛成してくれる人がけっこういるんだ、とか。悪いことばっかじゃないっすね。

中谷 NPO活動でよく講演会に行くんですけど、ある高校で訴訟の話をしたあとに、ひとりの高校生から「この訴訟をやってくれて本当にありがとうございました」って言われたんですよ。詳しく話を聞いたら、その子は前に女の子とつきあって、いい関係を築けてたんだけど、「私たちつきあい続けても結婚ができる関係じゃないから、早めに別れよう」って言われて、別れちゃったんですって。それがずっと心残りで、この訴訟のニュースをインターネットで知って、「将来、自分が結婚したいと思ったときに結婚できる未来が来るかもしれないって希望がわきました」って涙ながらに言ってくれて。SNSとかでも応援してくれる声はたくさん聞くし、それもすごく励みになっているんですけど、そうやって直接声をかけられたことで、ひとりの若者の未来の希望になってるんだって実感できたのはとてもうれしかったです。

チャッキー 札幌の判決があったときは、日本だけじゃなく世界も巻き込んで、すごいことが起きた!という感じがしました。自分も何か少しは役に立ったのかなと思いましたね。

text and interviewed by Mami Hagiwara / photo by Emi Yasuda
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