妊活を始めたくても情報がない時代
わたしが妊活を始めた約10年ほど前はロールモデルがまだまだ少なく、妊活を始めたくても「どうやって妊活相手を探せばいいのか」「何に気をつければいいのか」といった具体的な情報を得るのに苦労しました。今の状況とは大きく違う時代で、わたしより前に妊活を始めた先輩方はもっと大変だったと思います。
わたしはセクシュアルマイノリティ女性のピアサポートの場に参加したり、スタッフをしたりしたこともありましたが、子どもを望んでいる人にはなかなか会えませんでした。一度、参加者さんから「実は子どもがいる」と話が出たとき、若干、場がザワザワしたことを印象深く覚えています。そのくらい珍しいことだったのでしょう。
子どもを望む当事者との出会い
それでも情報がほしかったわたしは、現「特定非営利活動法人にじいろかぞく」共同代表の小野春さんの講演を聞きに行ったり、妊活を経験したセクシュアルマイノリティ女性のブログを読んだりしていました。
そんな中、新宿2丁目のお店に行ったときに、たまたま子どもがほしい人が集まっていて盛り上がり、仲間がいることを嬉しく思いました。そのお店で企画された子どもがいる・ほしい人たちのピクニックに参加して、レズビアンカップルに育てられたお子さんに初めて会えたのも、すごく背中を推してもらえた経験でした。とにかくお子さんがきゅるきゅるでかわいくて、楽しそうにしていて。「こんな幸せそうな子が生まれてくるなら絶対子育てしたい」と迷いが吹っ切れました。
その後、お店で集まったメンバーを中心に、現「こどまっぷ」の前身となる「子どもがほしいLGBTsの会」を立ち上げました。「まずは子どもがほしい人たちで勉強しながら発信しよう」と動き始めたのです。イベントを行う中で、同じ思いを抱える人たちがつながり、輪が広がっていきました。
イベントでは、妊活を始めるにあたってどんなことに気をつけるべきか、保健体育で習ったような内容から、「生物学的に妊活のパートナーとなる相手とはどんな話し合いが必要か」「万が一のときに親権はどうなるのか」など、司法書士さんなど専門家も呼んで、みんなで勉強しました。また、子どもを望む生物学的に男性の方と女性の方にそれぞれ子育てへの関わり方の意向を聞き、マッチングの場を設けることも。手探りながら、仲間と一緒にいろんな情報を集めて勉強し、イベントに向けてああでもないこうでもないと組み立てていった感じです。準備は大変だったし、意見の食い違いで揉めたけど、とてもとても楽しくて充実して、自分のためにもなった経験でした。
妊活の壁、情報の壁
わたしは関東圏で妊活・出産・育児を経験してから地方にUターンしました。昔と比べると、今は子どもがほしい・子育てをしているLGBTQ+のコミュニティは全国的に広がってきていますが、関東と比べると地方は課題が山積していると感じます。SNSによる子育てをするLGBTQ+の可視化や、様々な団体の活動などでかなり情報を得やすくなっているとは思いますが、周囲にロールモデルが少ないことは課題です。それは、Uターン後に地方で妊活・育児をしている方々と実際にお会いする中で感じたことです。
わたしは、子どもはほしいけどなかなか妊活に踏み切れない時期がありました。「レズビアンのわたしが子どもを持つなんて本当にできるのかな」「子どもがいじめられたりしないかな」と不安がたくさんあったのです。
そのような状況から一歩踏み出せたのは、互いに不安を共有し、知恵を出し合って情報を集める仲間ができたことに加え、実際にLGBTQ+の親に育てられている子どもに会えたことがきっかけでした。リアルな姿を見ることで希望を持てたというか。ですが、地方ではそういう機会がほとんどないように感じます。そうなってくるとまず子どもをもつことが人生の選択肢に入ってこない、望んでも一歩踏み出すハードルの高さはますます高くなります。
もう1つ、これは自分たちではなんともしがたい大きなハードルなのですが、わたしが関東で体外受精をしてくれる病院を探したとき、「婚姻を証明する戸籍を提出してください」と言われ、結局対応可能な病院は見つけられませんでした。家から通える範囲で探したのでもっと範囲を広げれば見つかったのかもしれませんが、これが地方となると探し当てるのは本当に難しいのではないでしょうか。実際に当事者の仲間に聞くと、飛行機や新幹線を使って遠方の病院に通うことも珍しくないようです。
妊活は自分の体のリズムで進める必要があるので、自分で好きにスケジュールを組むことはできません。日程を調整するのにとても苦労します。金銭的にも時間的にもその負担は相当なので、この時点で諦めざるを得ない人も多いでしょう。また、「地元に病院の選択肢がない」というのは、当事者にとって本当につらいことだと思います。わたしもずっと地方にいたら、子どもを持つ選択肢は選べなかったと思います。つまり、わたしの子どもたちは生まれてきていなかった。想像するだけでめまいがします。
こちらに戻ってきてもうすぐ3年ですが、にじいろかぞくのスタッフとして、子どもを持つ・これからほしい人たちのオフ会をやったり、山口県や福岡県で行われるプライドイベントで「にじいろかぞく」のブースを出して、つながっていただけるようなイベントをやったりしています。参加者の方々の不安そうな顔をみると、心がぎゅーっとなります。ついハグしてしまうこともあります。もっともっと輪を広げて、わたしがこれまでそうしてきてもらったように、いろんな方に寄り添い、ときに背中を押せたらいいなと思います。


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