2026-05-15

【妊活】不妊治療と仕事の両立。そして子育てを通して感じる人生の厚み

プロフィール

かんさん(42歳、レズビアン、公務員、佐賀県出身)

住まい 佐賀県 3人かぞく(子ども2人)・マンション暮らし

目次

掲示板でドナーを探すものの…

子どもがほしいと思い、精子提供者(ドナー)を探し始めたのですが、頼れる男性の知り合いは全くいなかったので、友情結婚の掲示板に書き込みをしました。結婚が前提の人たちが利用する掲示板でしたが、わたしは「結婚はしません。精子提供に協力してくれる人を探しています」と書き込みました。それから8件ほど連絡があり、そのなかの何人かと実際に会って、今のドナーを選んだ流れです。

掲示板を通じて知り合った人と初めて会うときは怖かったです。メッセージのやりとりだけではどんな人かわからないので、リスクを避けるために、知り合いがやっているお店で会うなどの対策をしていました。わたしはたまたま怖い目にはあいませんでしたが、実際会ってみると、前提を覆して入籍を求めてくる人がいて戸惑いました。また、精子提供の際に直接の接触を提案する人などもいると聞きます。もちろん悪い人ばかりではないと思いますが、しっかりとしたリスク管理が必要だと感じました。

仕事をしながら妊活に励む

まず前提として、婚姻状態にある異性カップル以外に生殖医療を施してくれる病院は限られます。これは、日本産婦人科学会のガイドラインによるもので、わたしが妊活していた平成27〜31年くらいの情報です。

1人目のときは、ほとんど病院に通うことなく授かることができました。2人目の妊活のための病院探しは、上の子がいることもあってか比較的スムーズでした。しかし、妊活自体は難航し、1年以上通院することに。特に大変だったのは、仕事・育児と並行しながら不妊治療を続けること。仕事や上の子のお迎えなどで時間の制約があるなか、自分の体調に合わせて急遽病院に行かなければならなかったりと、スケジュールの調整に苦労しました。

通院のために会社を休むことも多かったので、上司に状況を説明しました。「現在、妊活をしているので、突然休むことがあります」と伝えたところ、頭を抱えて驚いていましたね。結婚していないシングルマザーの部下から妊活宣言されるとは夢にも思っていなかったのでしょう。上司は、仕事の調整さえできれば問題ないと言ってくれたので、相談以降、より休みやすくなったのがよかったです。

わたしは用意された制度は使わせてもらうし、必要ならカミングアウトもできる。割と強気なタイプなので上司に率直に相談できましたが、人によっては相談自体の心理的ハードルが高く、つらく感じる人もいると思います。

妊活の継続にはハードルが

妊活を進めるなかでドナーの保険証を病院に提出しなければならない場面がありました。我が子たちの父親は「父親」として子どもに関わりたい人なので、すんなり協力してくれました。しかし、このような対応が難しい人もドナーもいるので、その場合、治療の継続が難しくなってしまうケースもあります。

妊活中はおおよそ月に1回トライを続けていくので、ドナーもスケジュールをなんとかやりくりする苦労があります。毎月「明日病院へ」と呼び出されるのは大変ですよね。険悪になるときもありました(わたしが勝手に怒っていただけかも)。

また、費用面でも負担は大きいです。人工授精は1回2〜3万円は支払っていました。薬の処方などもあり、それらが何回も続くとすごい金額になっていきます。さらに体外受精となると、桁違いの金額です。無事妊娠に至れば出産・育児にもお金はかかるので、スッカラカンになるわけにもいきません。支払いのときは、どこまで続けられるかなといつも不安になっていました。

わたしは人工授精を6回ほどやって、これ以上うまくいかなかったらさらに高度な治療を受けるための転院が必要でした。しかし、法律婚していないことを理由に受け入れてくれる病院が見つからなくて。ギリギリのところで授かれたのでよかったですが、下の子には会えなかった可能性もあったと思うと、誰でも生殖医療を受けられるようになってほしいと強く思います。

セクシュアルマイノリティが子どもを授かるということ

子どもを授かるにあたって、セクシュアルマイノリティは法律婚をしている人たちにはない苦労を強いられます。高いハードルだからこそ、子どもを授かったときの喜びはひとしおです。

今もそうかもしれませんが、一昔前、ひとり親は「子どもが“ひとり親の子”だと後ろ指さされないようにしっかり育てなきゃ」というプレッシャーがあったような気がします。子育てをしているセクシュアルマイノリティも、もしかしたらそんなプレッシャーを感じているかも、と仲間と話すことがあります。それに加えて、わたしはひとり親でもあるし、自分の父親の教育方針への反発もあって、かなり力んで子育てをしていて。子どもたちも大変ですよね(笑)。もっと力を抜いて楽しむことが大切だと思います

子育てをしていると、「親の気持ちってこうだったんだ」「子どもってこうやって育っていくんだ」と日々新しい発見があります。「子ども」として育ってきて、今度は「親」の立場をやると、過去の経験から目の前の子どもの気持ちが想像できたり、子どもの頃の親の行動がより深く理解できたり、逆に「全く理解できん!」と憤慨したり、人生の復習をしているような気分です。

わたしはケアレスミスが多いのがコンプレックスなのですが、下の子が注意力散漫にちょこちょこ動き回るのを見て「わたしもこんな子どもだったな。特性だからうまく付き合うしかないかも」といい意味で諦めがつきました。また、「もしあのとき、こんな声かけをしてもらっていたら、きっと嬉しかっただろうな」と思い、同じような場面で我が子にその言葉をかけることもあります。そうすると、どこかホッとするというか、自分も癒される感覚があるんです。言葉にするのは難しいけれど、「人生の厚み」が増していく感じ。「あぁ、わたし、めちゃくちゃ人生味わってるなぁ……!」と実感します。親にしてくれた子どもたちに感謝です。

text&interview:Honoka Yamasaki / photo:Rina Amagaya / retouching : Emi Yasuda / みらいふ編集部

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