2025-04-30

ふたりだからこそ、起業につながった世界旅行と「ものづくり」

プロフィール

右/多田さん(40、レズビアン、会社経営(製造・小売業)、香川県出身)

左/yamamotoさん(51、レズビアン、会社経営(製造・小売業)、埼玉県出身)

パートナーシップ 2009年~(2024年現在、16年目)

住まい 埼玉県

利用制度 緊急連絡先カード:あり(オリジナル)

yamamotoさん、多田さんは共同経営者です。15年前にコミュニティで出会い、ふたりで70日間の世界旅行へ。最後の滞在地カナダで1か月間過ごすうち、時間に余裕があったため「ものづくり」に没頭したyamamotoさん、帰国後その作品が、商品化の運びとなり、ふたりで起業することになります。セクシュアリティ、出会いやカミングアウトなどふたりのこれまで、今、将来について伺いました。

目次

【セクシュアリティへの気づき】から、コミュニティにくるまで

幼なじみが教えてくれたセクシュアリティ

yamamoto:わたしは自分のセクシュアリティについての自覚がなくて、女の先輩に憧れていることを全員に伝えてしまっている感じでした。小学生から中学生まで、いつも一緒の幼なじみがいて、部活も同じソフトボール部で、その子がバイセクシュアルで、わたしをずっと見てきて「絶対そうだ」と気づいていて。わたし自身は気づいてないから自分のセクシュアリティに悩むこともなくて。

 結婚の話になると男性とつきあわなくちゃなぁと思ったけれど、悩んではいなかったです。でも、この幼なじみの彼女がいなかったら、住む世界がずいぶん変わっていたと思います。そんな自覚のないわたしなので、親にカミングアウトすることもまったく考えず、この幼なじみに勧められて、コミュニティにも参加したくらいでしたね。

受け入れられなかった自身のセクシュアリティ

多田:自身のセクシュアリティについては、大学の時に3年間つきあった女性がいて、でも自分は、その人だから好きだと考えていました。自分は同性が好きというのは受け入れられなかったですね。周りから26歳で結婚というワードがすごく出てくるよと言われて、24歳の頃、あせってすごく落ち込んでいた時に、コミュニティという交流の場があると知り出かけました。初めて同じセクシュアリティの人に会って、当たり前に皆そこにいて、安心感がありましたね。

【出会い】 告白の言葉「好きって言ったら、どうします?」

ーおふたりの出会いについて聞かせていただけますか

yamamoto:わたしたちが知り合ったのは、オフラインのコミュニティ(アカーのオープン・ミーティング、2008年頃まで東京にあったレズビアンやバイセクシュアル女性が集う場)でした。わたしが参加した数カ月後に多田が来て、多田の会社がわたしの職場の近くにあり「お昼でもどう?」ということになって。その後、わたしがTシャツをつくりに多田の会社に行ったり、BBQやカラオケの企画をふたりで立てて、仲間を誘ったりして、そこから親しくなっていったかな。ものづくりが好きなのは共通していたので、一緒にワークショップによく参加していましたね。交際してすぐ半同棲生活となりました。

多田:わたしは初めてのコミュニティ参加でyamamotoに出会いました。同性愛の人に会うのが初めてで、とまどいつつ、同じ仲間がいるという安心感がありましたね。yamamotoとは職場も近いし親交が深まっていって。告白したのは、わたしの方からです。「好きって言ったらどうします?」と伝えました。

yamamoto:そう告白されたのが、唐突に感じたので「3日待ってほしい」と伝えると、「待てない」と言われて「即決め?!」させられた、そういうことがありました。

多田:わたしは話すのが苦手なタイプで、yamamotoは120%、1日の出来事や気持ちを喋らないと気がすまないタイプ。だから、わたしにとっては、よくしゃべらされる状況がよかったのかなぁという感じ。「しゃべりたいyamamoto」と「しゃべらされる多田」みたいな。

日常のことを話す時と、喧嘩する時は違いますけれど。日常のことはyamamotoが一方的にしゃべって終わる。喧嘩のときだけ、yamamotoから質問がとんでくる。yamamotoから「なんでそうなの?」と聞かれて、意見を求められて。そこで、yamamotoの意にそぐわないことを言うと受け付けないので、また「なんでそうなの?」というのをくり返されている感じ。まぁしゃべるのがいいということだよね(とyamamotoさんに同意を求めるふたりの様子がとてもほほえましい)。意にそぐわない意見がずっと続くと、なかなか話が終わらないので難しいとは思っています。

yamamoto:喧嘩が多いですね。一方的にわたしが怒るので。つきあい始めた最初から。それはずっと変わらない。15年間、些細なことからの喧嘩ですけれどね。最近は喧嘩も減ったよね。(と多田さんに同意を求めるyamamotoさんも優しい雰囲気)自分の中にためこまないで、伝えるのかいいのかもしれないです。

【二人の危機】なぜ、乗り越えられた?


ーこれまでの15年間で、おふたりの関係がこわれそうなことはありましたか

yamamoto:つきあい始めてすぐ同居して、でも1回、別れようという話はありました。わたしがあまりにも怒りっぽいので、多田がしびれを切らして。あれは大事件だったよね。つきあって3年目くらいでした。コミュニティの合宿の時にその事件があって。その夜にコミュニティの仲間が私達のために緊急会議を開いてくれて、仲直りしたということがありました。それはこれまでつきあってきた15年間で1番大きな事件だったかもしれない。それ以来は別れようということはないので。

多田:その時、わたしはyamamotoと別れると決めていたので、決めたことを誰かに相談することはあり得ないというスタイルが自分には基本的にありました。でも、yamamotoがふたりの別れ話をコミュニティの人に相談して話を聞いてもらって、自分が変わることができた。

yamamoto:変わったよね。

多田:その夜に皆も交えて話をしたのがよかったと思います。それがなかったら、自分が変わることはなかったでしょうね。人に相談すること、話を聞いてもらうって、すごいことだと知った感じです。発見でしたね。そこからは大きなことはなく、ここまで来ています。

【カップルとしての暮らし】 住まい、家事分担

ーふたりで暮らす中で、現実的なことを教えていただけますか

多田:つきあいはじめて間もなく、わたしが転勤になり半年の間、遠距離でつきあい、戻ってくることになった時に、同居を始めました。

yamamoto:多田が戻って来たときに、一旦わたしの所に住んで、その後ふたりで賃貸の場所を探しました。不動産屋さんには、関係性を話して住む場所を決めました。(そばで支えている多田さん、それにそっと耳を傾けるyamamotoさんの姿がとてもほほえましく素敵に見えました)

yamamoto:今の家は、賃貸契約はしていません。わたしの両親のものです。一時期は家の購入も考えたけれど現在も賃貸で、これからも賃貸の予定です。今後は、二拠点生活などもしてみたいと考えています。

家事分担は、多田が掃除と洗濯、わたしが料理とお金の管理。これは初めからずっと変わらないです。会社のお金のこと、口座の管理などは、多田がやっています。わたしが会社のことをするのが面倒くさくなってしまって。多田の収入もすべてわたしがあずかっています。

多田:わたしは料理とか家事ができないのでおまかせですね。全部、収入をyamamotoに渡しています。

【不安への対処】手作りの緊急連絡先カード。他は…きっかけや時間が必要

ーこの先の不安はありますか。何か対策はしていますか

yamamoto:どちらかが病気とかで先立つことが不安ですが、公正証書のような書面をつくることはしていないです。エンディングノートは書いていたけれど、きっかけがなくて。こだわりがあってやらないということでもないんですけれど。

多田:保険は経営者が入れるそれぞれの保険に入っています。

yamamoto:パートナーシップ制度は利用していないです。さいたま市に引っ越した時に問い合わせたこともあったけれど、今は必要性を感じていなくて。忙しいこともあって情報を得ることもしていません。パートナーシップ制度を利用したくないからということでもなくて。詳しくどんなものかも知らないのです。利用するタイミングが来れば、利用するのかも。

多田:緊急連絡先カードは、coLLaboのイベントでつくり、今でもそのカードをお互いに持っています。

yamamoto:デザインしたのは多田で、わたしの知り合いで大学病院の救急にいた看護師が、かぞくに電話する時のカードの項目についてアドバイスしてくれて、「キーパーソン」という項目をつくり、名前と電話番号があったら連絡しやすいとアイディアをもらいました。

多田:もし同性婚ができるようになったら、例えばわたしたちの会社にいるパートさんに、今は伝えてないのですけれど、自分たちの関係性を伝える、カミングアウトするきっかけになるのかなぁとも思います。そういう意味でも法律婚はありかも。もしできたら婚姻届を出します。

【ライフワークバランス】ふたりが求める働き方


ー今後、考えているプランや目標などがあったら、聞かせてください

yamamoto:今後、日本一周や車での長期旅行を考えているのですが、これも多田発信です。早めに言っておかないと実現までにまた時間がかかるから(笑)。

わたしたちがいなくても会社がまわっているという形がつくれて、なるべく自由な時間をふたりで過ごすことができるようにという目的があります。今がんばって働いて、しくみを作っています。

多田:今、パートさんが5人くらい来てくれて1年半くらい、イベントで不在になっても仕事が回るという状況になってきたので、わたしたちが出勤しなくても、会社が運営できるようになったら理想、それが目標になっています。

おふたりからのメッセージ

多田:素直がいちばん。

10年前から働き方について考えてきて、少しずつですがお互いに理想の働き方に近づいてきたと思います。自分にも、相手にも、素直でいられることが大切だと考えています。

yamamoto:付き合いはじめてから色々な試行錯誤をくり返してきました。仕事のこと、住まいのことなど、必要なことは2人で話し合ったり、実際に体験してみたり。それをくり返して、2人が幸せと思える環境を作っていると思います。いつまでも「2人ならできる」と支え合えたらいいなと思います。

ライターのひとこと

お互いに相手を気遣いながら、質問にこたえるふたりの姿がほほえましかったです。今後、商品化される作品には、ふたりのアイディアとおしゃべりと愛がたっぷりつまっているイメージがふくらみました。会社の共同経営者としてもつながり、おふたりが望むすばらしい働き方ができることを願います。

interview & text : Ayumi Kojima / photo : Shino Kawachi , ご本人提供 / retouching : Emi Yasuda / みらいふ編集部
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