プロフィール
右/井上 ひとみさん(45歳、レズビアン、獣医師、京都府出身、特定非営利活動法人カラフルブランケッツ理事長)
左/瓜本 淳子さん(45歳、レズビアン、動物看護師、大阪府出身、特定非営利活動法人カラフルブランケッツ副理事長)
パートナーシップ 2011年~(2025年現在、14年目)
住まい 大阪府大阪市住之江区
利用制度 パートナーシップ制度:あり(2018年 大阪市 第一号) 公正証書:あり(遺言) 緊急連絡先カード:あり
失恋のタイミングが重なった2人

ーお2人の出会いについて教えてください。
ひとみ:お付き合いをしていた人との別れがきっかけでした。私がレズビアンだと気づいたのは高校3年生の頃。周りに相談できる人が一人もいないまま大人になり、仕事で関わりのある方がレズビアンであることを打ち明けてくれました。初めて当事者と出会い、私は色々と彼女に相談をしていくうちに好きになっていきました。
私は告白したのですが、その方は10年間付き合った人と別れたばかりでそういう気にはなれないと断られてしまって。なんとか押して付き合ってもらったのですが、やっぱり相手と私の間に温度差があり交際期間中にしんどくなってしまいました。
当時利用していたmixiで、同性愛者の友だち募集というコミュニティを見つけて、藁にもすがる思いで「話を聞いてくれる人いませんか」と投稿をしたら、いくつかいただいたコメントの中にじゅん(淳子)がいました。たまたま同い年で、たまたま近くに住んでいたので、何度かやり取りをしていくうちに「会おうか」という話になり実際に会ったのが始まりです。
ー相談相手を募集したところから始まったんですね。
ひとみ:当時、Twitter(現X)や「愛ビアン」という掲示板など、ネット上での当事者コミュニティはあったのですが、その頃私はまだTwitter(現X)はやっていませんでした。掲示板は「微ぽちゃ(少しぽっちゃりした体型のこと)」など、専門用語もたくさんあってあまりよくわからなかったし、ネカマ(インターネット上で匿名であることを利用して女性のフリをした男性)も紛れ込んでいたりしたので、実際に会うまでは恐怖心がありました。
なので、日中の天王寺の人がたくさんいるところを待ち合わせ場所に設定しました。実際にじゅんと会い、ネカマではないことにまず安心し、それから当時の彼女との状況をひたすら話しました。3時間くらい話していたのにじゅんはずっと聞いてくれて。「なんて優しい人なんだろう」と思いましたが、その時はお互いに友だちとしか思っていなかったです。
友だちから恋人へと関係性が変化
ーそれから進展したきっかけは?
ひとみ:結局、当時の彼女には振られてしまいまして。その頃、じゅんも当時好きだった人に振られました。偶然タイミングが重なり、冗談交じりで「『傷の舐め合い会』をしよう!」と2人でビアンバーに行くことにしたんです。今はもう閉店してしまっていますが、以前心斎橋にあった「plutonium」というお店に行きました。そこのママさんに「私たち2人とも振られたばかりなんですが、誰か合いそうな人いませんか?」って聞いたら、「あなたたちが付き合っちゃえば?」と言われて(笑)。
予想外の回答に思わず「いやいや、うちらはそんな関係ではないんですよ」とめちゃくちゃ否定してしまいました。じゅんもどちらかといえばボーイッシュな感じの見た目をしていたので、勝手に恋愛対象はフェムさんなんだろうなと思ってたし、私はじゅんの恋愛対象には入らないと思い込んでいた部分もありました。けど、家に帰ってよく考えてみると、あそこまで必死になって否定するのは失礼だったなと思って(笑)。それで、じゅんに謝罪のメールを送りました。
淳子:そのメールが届いた時、すごく真面目な人だなと思いました。初めて会った時から一途な人だなと思って好印象だったのですが、このことでさらに好きになっていきました。
ひとみ:後日、じゅんから急に呼び出しを受け、待ち合わせ場所を決めて車で向かいました。そしたら車の中で告白してくれて、「私でよければ」と言って付き合うことになりました。
淳子:それが2011年。3月末に出会って6月21日に付き合いました。

公私共に生活を一緒に送る2人

ー付き合ってすぐに同棲されたとのことですが。
ひとみ:じゅんは実家に住んでいたので、よく私の家に来てくれていました。私の家とじゅんの職場の距離も近かったので、「もうここにいたら?」みたいな感じで、後から転がり込む形で同棲することになりました。
ー2人の生活リズムはどんな感じですか?
ひとみ:ほとんど一緒にいない時はないかもしれません。付き合って1年くらいで学生時代の同級生と一緒に動物病院を開業したんです。仕事がだんだん忙しくなってきて、最初はじゅんの休みの日に手伝ってもらっていたのですが、それでも人手が足りなくなって。じゅんに動物病院で手伝ってもらいながら動物看護師の資格を取得してもらい、完全にこっちで働いてもらうことになりました。なので、今は職場が同じです。
だいたい10時に起きて職場に行き、16時頃に昼ごはんを食べる。そして18時から診察を再開し、家に帰るのが23時くらいで、もっと遅くなることも。お互いにこんな感じの生活をしています。
淳子:2人とも帰りが遅いので、料理をするのが難しくて。お互いがそれぞれできることをしていこうというスタンスで家事をしています。なので特に家事分担などはありません。
ひとみ:料理は一度頑張ろうと思って試みましたが、料理って凝ったものを作っても食べたらすぐになくなってしまうのが嫌で(笑)。。なので、今は出来合いのお弁当を買ってきて食べることが多いですね。
14年の交際で喧嘩はほぼゼロ
ー職場も家も同じだと喧嘩することもあるのではないでしょうか。
ひとみ:全然喧嘩しないんですよ。したとしても「喧嘩」というよりも私がじゅんに怒られる、ということが年に1回くらい。私も声を荒げるとかはしない性格ですし、じゅんも優しいので言い合いになったりはしません。
淳子:同じ職場ではありますが、別々の診察室でお互い違うことをやっているので、良い距離感が保たれているのかもしれません。
ー交際14年でほぼ喧嘩がないのは、きっとうまく関係性を築いていくコツがあるのだと思ったのですが。
ひとみ:よく質問されるのですが、コツというものは特に思い浮かばなくて。私たちは動物病院のほかにLGBTQ関連の活動もしているので、休日はほぼじゅんにも活動に付き合ってもらっている形になります。そうすると休める時間がほぼなくなってしまうので、じゅんに「休みがなさすぎてもう無理」と言われることがあります。
じゅんが実家に帰ると言って出ていこうとするのを私が引き留めて、「考え直してください」と言って戻ってきてもらいます。話すというよりお願いをします(笑)。
淳子:でも、結局変わらないままです(笑)。

同性婚が認められた社会は?家族観と結婚観

ーとても穏やかに過ごしているのが伝わります。お2人はこれからのライフプランをどのように見ていますか?
ひとみ:不安な部分はあります。大阪でパートナーシップ制度が導入されてからは、生命保険の受取人を同性パートナーにできる保険会社が増えました。私たちも制度を利用しているので、受取人をじゅんに変えようと思い書類を取り寄せたんです。すると、その書類に法的には同性パートナーは婚姻関係ではないため、死亡証明書を出してもらえない可能性があること。保険会社としてお手伝いはするが、それでも保険金を出せない可能性があること。それを了承したうえでパートナーを受取人にしてくださいとの旨が記載されていました。
絶対的な保証がないのは心配ですし、法定相続人以外を受取人にすると生命保険控除が受けられなくなります。現状、私は受取人を母にしているのですが、じゅんはお父さんにしているんです。彼女のお父さんは数年前に亡くなられているので、早く手続きをしないといけないなんですけど、まだできていません。
ー将来については結構話しますか?
ひとみ:そうですね。最近でいうと、70歳まで働かないといけないねって話しています。私たちは、35歳の時に今の家を35年のフルローンで買ったんですよ。当時は繰り上げ返済とかして早く終われるかと思っていたのですが、どうも現実的には難しそうでして。とはいえ、70歳までバリバリ働くのも無理なんじゃないかという気がしています。40歳を超えて体力が無くなってきていると実感しますが、解決策が特にないのが現状です。
淳子:この家は2階にリビングやお風呂があるので、将来足が悪くなったら2階に上がるのも大変なんじゃないかと話しています。
ひとみ:この家を売ってくださった方も、体を悪くして全部ワンフロアにあるマンションに引っ越していかれたとのことでした。買った時は30代だったのでそんなことは想像もつきませんでしたが、最近は私たちも同じようになるかもしれないなんて思いながら過ごしています。結構、行き当たりばったりの人生です(苦笑)。
ー社会全体の話でいうと、同性婚が法制化された未来をどのように描いていますか。
ひとみ:お金のことや家のこと、というか老後のこと以外では、私の今の悩みがほとんど解決するのではと思います。ただ、私は「家族」というカテゴリーはあまり好きではなくて。「家族」という言葉が使われる時、「自分の家族さえ良ければ良い」みたいなニュアンスが含まれているような印象があったり、家族であれば仲が悪くても絶対に助け合わなきゃいけないような「縛り」を感じてしまいます。
なので、一緒の戸籍に入る結婚制度にはあまり肯定的ではありませんでした。とはいえ、現実的に法的な婚姻関係がないと、家族でないことの不便さを受けざるを得ない現状なので、少しでも生きやすくなるには法律婚をするしかないと考えています。誰が誰を好きになってもいいし、お互いの同意があれば誰が誰と一緒にいたとしても安心して暮らせる社会になってほしいです。
おふたりからのメッセージ

ひとみ:私はずっとクローゼットで生きてきましたが、カミングアウトしてすごく楽になりました。だから、みなさんにも同じように楽に生きられるようになってほしいなと思うのですが、カミングアウトした方が良いとはっきり言えるような状況ではないのが現状です。誰にも言えないし結婚もできないと思いながら過ごしている人、親に受け入れられずパートナーと泣く泣く別れた人、カミングアウトが原因で親との関係性が悪くなった人をたくさん見てきました。まだ理解されないこともあるかと思いますが、世間体や固定観念にとらわれず、自分の幸せを第一に、自分のことを認めてあげてください。私たちもカミングアウトして良かったと思えるような社会を実現するために活動していますし、早くそうなることを願っています。
淳子:ひと(ひとみ)と結婚式を挙げたあと、私の母が「自分の娘が同性愛者だとわかった時どう思いましたか?」と聞かれた時に、「相手がひとみちゃんだったから何も不安はなかった」と言ってくれました。私のこともひとのことも認めてもらえてすごく嬉しかったです。当事者の方やその親・保護者の方の中には同性愛者だと幸せにはなれないと思っている方もいるかもしれませんが、絶対にそんなことはないと伝えたいです。
text&interview:Honoka Yamasaki / photo:ふ~みん / みらいふ編集部
ひとみさん&淳子さんの記事をもっと読む(次の投稿があると以下に表示されます)



