プロフィール
左/中谷衣里さん(32歳、L、NPO法人L-Port 職員、北海道旭川市出身)
右/チャッキーさん(30代、L、会社員、北海道上川郡出身)
2008年~(2024年現在、17年目)
北海道札幌市
パートナーシップ制度 あり(2018年、札幌市)
公正証書:なし 緊急連絡先カード:あり
【出会い】掲示板で出会ってすぐカップルに
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中谷 女性が好きな女性が交流する掲示板で出会いました。その地域だと母数があんまりいなくて、2週間ぐらいメールのやりとりをして、会ってみようか、って。
チャッキー 車で30分ぐらいのところに住んでいました。衣里はまだ学生だったから、交際するとは思ってなかったんですけど。
中谷 会ってみたら第一印象がとてもよかった。今も見た目のスタイルは変わってないよね?
チャッキー 16年前だからちょっと老けたかも(笑)?
中谷 今はもう年齢差はあまり感じないですね。初めのうちはけっこう大人だなーと思ってましたけど。
チャッキー 会ってすぐ告白されたんですが、責任を感じて、大丈夫なのかな、早く大人になってくれ、と思いましたね。今は知識も経験も逆転されて、こっちが頼ってる(笑)。でも、衣里って抜けてるとこもあるんですよ。
中谷 知り合った当時、私は学校で同級生にアウティングされちゃって、同学年の150人ぐらいがみんな知ってて、別に私のアイデンティティってそこだけじゃないのに、話したこともない同級生から「レズなの?」とか言われて……。先生や親からも差別的な言動を受けて、ひとりで悩んでいたんです。当時はまだスマホじゃなくてパカパカの携帯電話の時代で、家に家族共用のパソコンが1台だけあったんですけど、検索しても相談できるサイトとかは見つからなくて、その掲示板にたどり着きました。
チャッキー 私は地元で会社員をしていて、まったくそういうセクシュアリティの友だちがいなかったんです。初めて掲示板にアクセスしてみて、出会ったのが衣里でした。
中谷 周りに同じ当事者の人がいなかったから、誰かとつきあいたいわけじゃないけど、安心できる相手が欲しかった。友だちだったら離れていっちゃうかもしれないけど、恋愛関係ならある程度は長く続くだろう、そしたら私の悩みや辛さが和らぐかもしれない、って思ったんです。今考えると、価値観がおかしかったのかもしれないんですが。
【同居】「友人同士のルームシェア」
中谷 交際を始めて、2008年に札幌の大学に進むことになりました。
チャッキー 私も札幌に出てきて、衣里が学生の間はそれぞれ部屋を借りて、住所は別なんだけどどっちかの家に転がり込んでるみたいな生活をしてましたね。
中谷 2014年に就職を機に札幌市内で同居して、社会人2年目で東京転勤が決まったんです。
チャッキー 離れ離れになるのはいやだなと思って、そのとき勤めていた会社でカミングアウトして、「つきあっている女性が東京に転勤になるので辞めます」って言ったら、「東京の店舗に行ってこい」ってミッションを与えられたんです。ちょうど世田谷区のパートナーシップが始まる時期だったから、世田谷で住むところを探しました。
中谷 物件が見つかって契約書に「同性パートナー」と書いて出したら、不動産屋さんから「同性パートナーって何ですか?」って説明を求められて、「女性同士のカップルで」と言ったら、「申し訳ないんですけど、大家さんの中には高齢の人もいて、同性カップルだと部屋を汚くするとか夜うるさくするっていう偏見があって審査が通らないこともあるので、どうしてもここに住みたいんだったら友人同士のルームシェアとしてください」って。仕事のための引っ越しで急いでいましたから、友人同士と書き換えたんですけど、そうやって不本意に自分たちの本当の関係を偽らないと部屋を借りられない可能性があるって、すごく差別的だと思いましたね。
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【住居購入】2020年、共同名義でマンション購入
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チャッキー 東京での仕事はおもしろかったけど、忙しくて疲れてしまって、2年後に衣里が札幌に戻ることになったときに私も今の会社に転職しました。
中谷 前に札幌で部屋探ししたとき、最初は私たちの間柄を隠していたから、「どういうご関係?」みたいな探りを入れられて居心地の悪い思いをしました。だから、今度はLGBTフレンドリーを標榜してる不動産屋さんにアクセスしたので、そこからはスムーズでしたね。
チャッキー もともと自分の家が欲しくて、仕事もやっと安定したから、コロナ禍でしたけど、分譲マンションを内覧して今の家に決めました。当時、北海道の地方銀行で同性カップルにペアローンを提供している銀行がなかったので、中古の安いマンションを一括で買って、名義は2分の1ずつ。
中谷 私はこだわりはまったくなくて、住めればいい、寝られればいい、という感じなので、住まいに関わる決断や購入品はチャッキーに任せています。
チャッキー 持ち家が欲しかった理由も、好きにリフォームできるという点でした。猫が大好きだったので、ペット可のところ。2LDKで、リビング20畳、4.5畳、寝室が6畳。80平米ぐらいですかね。
【生活スタイル】自分の理想を相手に押しつけない
チャッキー 今の仕事はシフト制で、早朝から夕方まで、休みも土日関係なくて。
中谷 私は時間不定で、休みもバラバラ。専門学校にも通っているから、在宅のこともあれば、夜遅くまで家にいないことも多いです。「休めるときにそれぞれ休もう」精神なので、相手のために早起きしたり、夜遅くまで起きていたりすることはほとんどありません。同居していても、数日、顔を合わせないなんてこともしばしば起こりますね。
チャッキー 同じ日に休めるのは月に1回ぐらい。貴重な共通の休みは買い物や温泉巡りを楽しんでいます。
中谷 家事は基本的にそのときできるほうがやります。私は料理が苦手で、チャッキーは得意。完璧な家事を100とすると、私は60くらいで、チャッキーは70か80くらいを求めているので、目標値に相違が出てすれ違うこともあります。でも、「追い求めたい人ががんばって、相手には自分の理想を押しつけない」ことをルールにしているから、大げんかには至りません。
チャッキー 確かに無理強いはしないけど、野菜クズぐらい捨ててよ、みたいなことはありますね(笑)。掃除や洗濯も担当は決めてなくて、できるほうがやる。まぁ、いい距離感なのかな。
中谷 生活費はお互いに出し合って、共通のクレジットカードを使っています。
チャッキー ほぼ折半ですね。
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【将来】私たちも結婚ができたら……
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中谷 これからもふたりで暮らし続けたいなと思っています。それぞれがやりたいこと、ありたい姿を尊重して、生きていきたいですね。新たな家の購入資金になるのか、結婚式に使うのか分かりませんが、月々決まった額をふたりで貯金しているので、早くそれを使いたいです。
チャッキー いくらあったら何年暮らせるかな?とか、そんな話ばっかりしてます。お互いの金融資産もだいたいは把握してるし、意外としっかり考えてますよ。でも、相続対策とかは今のところ何もしてないんですよね。
中谷 私たちも法律婚ができたら、子どものことや住む家のことをもっと前向きに話し合えるのかな、趣味や仕事に没頭してもっと「自分たち中心」で暮らしていけるのかなと思います。結婚できるようになるかどうかわからなくて、生活が落ち着いてないので、自分が子どもを産み育てるっていうことは考えてないんですけど、養育里親には関心を持っています。漠然とですが、社会的な子育てをしたいという気持ちはありますね。
チャッキー 台湾などを見ていると、同性婚が成立しても、すぐさま結婚できるようになるわけじゃないんですよ。私たちはまだ若いカップルなのかなって勝手に思ってますけど、悩み相談などをやっていて実感するのは、結婚できないことによる希望のなさを訴える若者がめちゃくちゃ多い。札幌高裁で違憲判決が出たのはすごくうれしかったですが、今後、最高裁に進んで、さらに何年もかかって、仮に国が整備を進めるとなっても実際に結婚できるようになるのはかなり先になってしまう。一刻も早く結婚できるようになるといいなと思います。
中谷 知り合いの新聞記者さんに小学校1年生ぐらいの子どもがいて、私たちはその子とも仲良くしてて、一緒に札幌のパレードを歩いたこともあるんです。その子の学校で家族の話になったときに、先生が「家族はお父さんとお母さんと子どもがいて」という伝統的な家族しか例に出さなかったんですって。「女性同士とか男性同士の家族もいるよ」と声を上げても、先生は「そんな家族はいません」って言って、その子が「衣里ちゃんとチャッキーちゃんのことを無視された」ってすごい怒って、家に帰ってから新聞記者のお母さんに話してくれたそうなんです。それだけでも本当にうれしかったんですけど、身近に同性カップルがいる世界で育てばそういう感覚になるんだなって思いました。そんな人がもっと増えてくれたらいいですね。
おふたりからのメッセージ
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中谷 訴訟の行く末を見守っていただけるだけでも、本当にありがたいことだなって思っています。裁判を始めてみて初めて知ったのが、原告になることだけが訴訟に貢献することじゃないんですよね。この訴訟が目指す先は結婚の平等ですから、それ実現するために、たとえば、法律を作る仕事をしている国会議員の人に手紙を書くとか、選挙に行くとか、国の為政者に直接的に働きかける手段はあります。もちろん、できる人から、できる範囲でいいので、そういったところでも一緒に動いてもらえたらいいなって思いますね。
チャッキー つきあってる相手の性別が同じっていうだけで、異性同士でつきあってる人たちと何も変わらないよって言いたいです。たとえば、同僚と話をするときに、彼氏彼女と決めつけるんじゃなくて、交際相手が同性かもしれないって思うだけで、きっと聞き方も変わってくる。結婚だけが幸せじゃないでしょうし、お互いを認め合いながら、決めつけないで、接してほしいなと思います。
text and interviewed by Mami Hagiwara / photo by Emi Yasuda
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