プロフィール
左/和知麻子さん(45歳、レズビアン、飲食業経営、北海道出身)
右/和田恵実さん(49歳、レズビアン、医療従事者、北海道出身)
パートナーシップ 2019年~(2024年現在、5年目)
住まい 北海道札幌市
利用制度 パートナーシップ制度 あり(2019年、札幌市) 公正証書:なし 緊急連絡先カード:あり
偶然から始まった2人の出会い

ーおふたりの最初の出会いについて教えてください。
和田:私にとって、彼女との出会いはドラマのようでした。当時、付き合っていた彼女と別れたばかりで、少し寂しい気持ちでTwitter(現X)のアカウントをつくったんです。札幌のLGBTQ+関連団体もフォローしていたら、偶然彼女が活動している写真が流れてきました。
彼女とは全く接点はなかったのですが、写真を見て「この人いいな」と、どこかピンときたんです。それで調べてみると、彼女は焼き鳥屋さんを経営していることがわかり、同世代で頑張っている姿が素敵だなと思って。それで、個人のアカウントを見つけてフォローしました。
そしたら、またもや偶然、当時使っていたセクマイ女性向けのSNSアプリ「LING」で犬を乗せた人のアイコンが目に留まり、開いてみると彼女だったんです。アプリ内で同じ地域に住む同世代の当事者と出会うのは難しかったので、見失わないようにとフォローしました。その後、彼女から「フォローありがとうございます」とメッセージが届き、やり取りが始まりました。
和知:普段生活をする中で、オープンリーレズビアンとして活動してきた私と、マイノリティの人たちと接点がない生活をしてきた彼女が交わることはなかったと思うので、とても偶然の出会いだなと感じます。
和田:しかも、私自身恋愛体質ではなかったので、すごいレア。お付き合いしていた女の子と別れた直後だったので寂しさはありましたが、その時はどちらかというと話し相手や友達を求めていました。そんな状況で何かピンとくるものがあったので、彼女と出会えたこと自体がドラマチックな出来事でした。
ーそれから、どのようにして距離を縮めていったのでしょうか。
和知:ご飯を食べにいくことになって、同世代なので聴く音楽や若い頃に見ていたカルチャーがすごく似ていて、話がとても盛り上がりました。正直、私は当時遊んでいたのですが、「この人と付き合うために真面目にならなきゃ」と、自分を変えたいという思いが強くなりました。
心の拠り所となる同居スタイル
ーお付き合いを始め、同居に至るまでの話をお伺いしたいです。
和田:当時は今よりももっと逆転した生活を送っていました。私は病院に勤めていて、朝6時には起きて家を出る生活だったんです。一方で、彼女は焼き鳥屋を経営しているので、朝6時に帰ってくるような生活でした。休みも全く合わず、会話できる時間がほとんどなくて。それでも少しずつ一緒に住むようになって、週に何回か泊まることもありました。
和知:私は15時間くらいお店にいて、それ以外にも事務作業や業者さんと話したり、とにかく仕事が忙しかったので、家には寝るために帰るだけでした。ただ、うちには犬がいたので、彼女に犬のお世話をお願いすることもありましたね。
ー同居してからのおふたりの生活スタイルはどんな感じですか?
和知:正直、私は商売をやっていることで、家事に関してはだいぶあぐらをかいています……。今でも家にいる時間は多くはないのですが、その分頑張って働こうと思います。そういう意味では俗にいう男性っぽさみたい思考があるのかな。
和田:けど、掃除をするってなると毎回ピカピカにしてくれるんですよ。日々掃除をしている身としては立場がなくなりますね(笑)。
和知:もともと家に執着がないので、何もない部屋にテレビとテーブルがポツンとある状態でした。彼女と同棲してからはライフスタイルが豊かになった気がします。家がすごく快適なので、帰りたいなと思うようになりました。

仕事と生活のバランス

ーおふたりの仕事スタイルについても伺いたいです。
和田:転職時、経済的に安定した病院かそこまで経済的に安定していない職場か、どちらで働こうか迷っていました。彼女に相談したところ、「自分に合った職場を選んだ方が良い」とアドバイスをくれたのです。特に生活が困窮しているわけでもないし、お店がしっかり営業されていれば大丈夫だと言ってくれたので、自分に合うと感じるような職場を選びました。
和知:逆に、私は融通が利かないので、仕事に対しては100%のコミットメントを求めています。ここがスタートラインであり、ゴールでもあるので、揺るがすことは許されません。長年この業界で働いてきて、従業員も抱えている以上、しっかりやらなければならないという意識があります。
なので、どちらかというと、パートナーに配慮してもらっている状況です。彼女がバリバリ働いてくれるのは全く問題ないですが、好きなところで働いてほしいというのが1つありました。それ以外については特にこだわりはありませんが、私にはお店があるので、困った時は助けを求めるかもしれないということは伝えています。
ー生活費は2人で出していますか?
和田:一緒に住むことが決まった時、生活費について話し合いました。お互いの収入からそれぞれが出せる金額を決めて、毎月その分を入れています。彼女の方が多めに負担してくれる場合、私は貯金に回すこともあります。
和知:経済的に波のある職業なので、自分の手元に入るお金は月によってかなりの差があります。まず家計を回すために必要な金額を計算して、その額を守るようにしてます。彼女も所得があるので、貯蓄に回してもらっています。
医療従事者と飲食店経営者の激動の5年間
ー話を聞いていて思ったのですが、飲食店経営者と医療従事者として、コロナという激動の時代を乗り越えてきたおふたりですよね。
和知:コロナの前に両親が相次いで亡くなり、その後、愛犬も亡くなり、この5年間は本当に激動の時期でした。コロナが本格化した時にも、経済的にもメンタル的にも大変で……。
今振り返れば、政府からの要請を守らなければならなかったのですが、実際には営業を続けるのが厳しい状況でした。「営業しないでください」「お酒を出さないでください」「営業時間を守ってください」と、厳しい指導がありましたが、助成金には頼らず、自分たちで営業を続けることにしました。
北海道では規則違反扱いされるので、店名が公開されるのも怖かったですし、そのリスクを考えながらとても悩みましたね。営業を続けるのが正解なのか、店を閉めるべきか、本当に大変な時期だったなと。
和田:あの時期は全く笑えず、食事も喉を通らなかった。パートナーが苦しむ姿を見るのもつらかったです。あの時期をもう一度過ごせと言われたら嫌ですが、もしまたそんな状況になったら、頑張るしかないと思います。隣で支え合いたいです。
ーコロナが落ち着いてからの生活は変化していきましたか?
和田:コロナが落ち着いてから、勤めていた病院を辞めて、彼女のお店を2年ほど手伝わせてもらっていました。
和知:お店では従業員を抱えているので、雇用に関してはさまざまな責任があります。従業員が働けるように回していかなければならないし、経理やお金の管理など、人数分の仕事を抱えているので、どうしても調理以外の業務が付随してくるんです。
ただ、正直、もうその部分には少し疲れてきたかなと思っています。将来的には、現在の業務を他のスタッフに引き継いで、もっと小規模な仕事をしたいというのが最終ゴールでもあったので、そこを手伝ってもらいました。

パートナーの存在を可視化するために

ー親御さんにはパートナーの存在を伝えていますか?
和田:明確には伝えていないけれど、彼女と実家に一緒に帰ったり、遊びに連れて行ったりしています。一緒に暮らしていることも知っていますし、初めて親に合わせた時に父が「娘をよろしくお願いします」と言ってくれたこともあり、何となく理解してもらえているのかなと思っています。
ー和田さんは実家で過ごしていた時間が長かったとおっしゃっていましたが、ある意味で親御さんからのバトンタッチのような言葉を受け取ったのだと感じました。「家族」というあり方に変化はありましたか?
和知:その点でいうと、一緒に暮らし始めてパートナーシップ制度を利用したいという話しをしていました。私たちは、2019年10月16日にパートナーシップを結んでいます。
ーどういった流れで制度を利用することになったのでしょうか。
和知:両親が亡くなった経験をしてから、「家族とは何か」について考える機会が多くありました。この人を守るために何ができるのか、何もないなと思ったりします。私の資産を譲るとなった時、公的な家族やパートナーでなければ多大な税金がかかってしまうこともあります。
大きな資産を動かしているわけではないのですが、もし何かが起きたときのために保険や生命保険を考えなければなりません。なので、この制度を利用して、パートナーとの関係性を証明していかなければならないなとは思っています。
「こういう2人もいるんだ」と感じてもらいたい
ーこれから2人でどう生きていきたいか、将来のライフプランについて考えていますか?
和知:私は子どもを産んでみたいと思ってたんですよ。ですが、彼女は子どもを持つことに対しての責任を持てないと考えているようで、なかなか足を踏み出すのは難しいと感じます。
和田:子どもを持って育てるということに対して、責任を持つ自信があまりなくて。もちろん、友達の子どもや彼女の弟の子どもたちは大好きなのですが、自分たちが子どもを持つとなると、その責任を果たせるか不安になります。だから、姪っ子や甥っ子、友達の子どもたちに対してできることを考えています。自分たちには子どもがいない分、何かサポートできることがあるのではないかと思い、できることをしていきたいと話しました。
和知:姪っ子や甥っ子が生まれた時から高校生くらいまでの過程を見ていると、子育て大変だわ……って思いました。夢見がちに話していたけど、今は彼女のいうとおり現実的に考えています。
和田:20代後半とか30代前半で彼女と出会っていたら、今とは違う考えがあったかもしれない。ただ、40代で子どもを大学生になるまで育てるとなると、体力的にも経済的にも自信がないんです。
ー現実的な話をする中で、将来のことで不安なことはありますか?
和田:やっぱり体のことかな。40代後半に入って、これまで以上に体力が衰えていることを感じます。彼女も同年代ですが、私以上に生活が不規則なので心配です。
和知:私はどちらかというと経済的なところ。2人とも働いていて、生き物を引き連れて暮らしているからこそ、10、20年後を考えた時にしっかりと自分で働き方を決めて、リズムを作っていかなければならないと思っています。
前と比べて、女性としてお店を経営することへのプレッシャーはかなり軽減されました。コロナ前までは強さを見せなければならないという気持ちがありましたが、今はその強さも柔軟に持てるようになりました。将来を考えると、経営者としてしっかりと働き続けたいと思っていますし、レズビアンであることをアイデンティティとして大切にしていきたいです。
若い人たちのロールモデルになりたいですし、同世代の人たちに「こんな2人もいるんだ」と感じてもらえるような存在でありたい。現在は大きな悩みはないですが、体調に関することは自分で管理していかなければなりません。自営業ならではの自由さを生かして、どうやって仕事を割り振り、コントロールしていくかを考えたいです。

おふたりからのメッセージ

和田:彼女との関係性を一言で表すなら「家族」です。本当にかけがえのない存在。パートナーがいることを当たり前だと思ってはいないけど、そばにいてくれるからこそ日々頑張れるし、強い気持ちで仕事に取り組める。彼女のおかげで生活が充実しています。
和知:彼女は一番最後に頼れる存在。私は商売をしているので、緊急の対応に迫られることがあります。最初の段階ではあまり人に相談することがないのですが、メンタルが限界を迎えそうになった時には助けてくれます。いざという時にいてくれるので、私にとって最後の砦のようなもので、自分を守るためのお守りのような存在です。




