2024-10-03

【研究紹介】結婚制度ではない「パートナーシップ制度」の意味がわかる研究ー 当事者の社会への関心を高め、さらなる変化を促す

この記事はこちらの論文をもとに書いています。

杉浦郁子、「制度との応酬によるニーズ認識 : 同性カップルの法的保障ニーズをめぐって」、和光大学現代人間学部紀要12:81 (2019年3月) PDF

<この研究の概要>
立教大学社会学研究科教授の杉浦さんは、パートナシップ制度には、当事者の関心を個人生活から社会環境へ拡大させ、当事者自身の法的に守られる必要を認識させるなど、重要な意味があると指摘しています。この研究は、2015年に渋谷区が始めた同性カップルのパートナーシップ制度をもとに、性的マイノリティ女性の声を分析し、制度と人々の関わりを詳しく探って、当事者の法的に守られるニーズがどのように認識され、形成されるのかを解明しています。

目次

パートナーシップ制度に法的に効力がないとは

同性カップルが法的に守られることは、今の社会でとても大事な問題です。

同性パートナーシップ制度は、同性カップルの関係を認めるために作られましたが、法的には結婚と同じ効力がありません。

例えば、結婚には相続権、親権、外国籍のパートナーへの在留資格付与などの権利がありますが、パートナーシップ制度にはないですね。

また結婚はどの地域でも可能である一方、パートナシップ制度は利用できる地域が限られ、転居する際には、パートナシップ制度証明書を返還しなければならないことも多いです。

では、論文の中を読み進めていきましょう。

渋谷区のパートナーシップ制度取り組み

渋谷区のパートナーシップ制度は、日本で初めて同性カップルの関係を公に認めたもので、非常に画期的でした。

でも、この制度成立以前は、同性カップル自身も法的に守られるニーズを認識することが少なく、コミュニティの内部においても広く共有されていませんでした。

特に性的マイノリティ女性は、社会資源が少なく、自分自身の生活を守るために精一杯で、法的に守られる必要などをはっきり言葉にするのが難しかったのです。

わかったこと1 制度が人々に影響を与える

杉浦さんは、当事者のニーズがまずあり、そこから制度が成立する海外の例と違って、日本では「制度が先にできて、それが人々に影響を与える」と考えました。

特に、制度が人々の行動や必要にどう影響を与えるかに注目し、パートナーシップ制度などが一見「法的に効力がない制度」でも意味があることを明らかにしました。

例えば、渋谷区の制度は、同性カップルが自分たちの関係を法的に認めてもらいたいという声を引き出し、その結果、みんなの社会への関心が高まり、制度の改善や新しい制度の導入が進む効果が期待されます。

わかったこと2 制度によってニーズが言葉にできるように

杉浦さんの研究は、渋谷区のパートナーシップ制度を利用した同性カップルや、利用を考えているカップルへのインタビューをもとにしています。

これにより、制度が個人のニーズをどう変えたかが具体的に分かります。

インタビューでは、多くのカップルが、制度に守られることで自分たちの関係が社会的に認められ、自信を持って生活できるようになった、と言っています。

この制度ができたことで、カップルは法的に守られるニーズを意識的に考え、言葉にすることができるようになりました。

<具体的なエピソード>

  • あるカップルはパートナーシップ証明書を取得することで、職場や住居選びで差別を受けにくくなり、生活が安定したと感じています。
  • 別のカップルは、この制度のおかげで家族や友人に自分たちの関係を説明しやすくなり、社会的な支持を得られるようになったと述べました。

この過程で、本人たちも性的マイノリティを取り巻く環境や法律に関心が向けられるようになっていました。

このような事例は、制度が個人のニーズをどう変えたかを具体的に示しています。

まとめ

杉浦さんの研究は、同性カップルが法的に守られるニーズを通じて、制度と人々の関わりを解明し、性的マイノリティ女性だけでなく、広い社会にも大切な知見を提供しています。

ライターコメント

パートナーシップ制度など、日本で成立している性的マイノリティ関連の制度は、結婚と同じような法的効果がないと批判されています。
しかし、社会は一度に大きく変わることができず、少しずつ変化していくことを意識するのが重要です。
この研究は、結婚と同じ法的効果がなくても、制度ができることで社会的な承認が得られ、当事者が自分たちの日常生活だけでなく、広い社会で生きることを想像できるようになると指摘しています。
これらを踏まえ、社会の変化の意義と限界を理解しながら進めていくことが大切だと再確認しました。

text by TSUJI / photo photoAC
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